なぞなぞと定義の重要性
多義性
一つの問題 P に対して、定義とそれによってイメージされるシナリオ ( Dn, Sn ) はいかようにも採れる。
男が一人ホームにいます。彼はマスクをかぶっています。別の男が一人、ホームに向かっています。さて、これは何の場面でしょうか?
この話が引き起こすさまざまなイメージに注意を向けよう。そして、シーリィが新たな例を挙げるたびに、イメージがどのように変化していくかに注目しよう。脳は瞬時に、あらたに定義しなおされた問題(マスクの種類)を受け入れて異なる答え(場面の説明)を出す。すべてのつじつまが合い一つにまとまったとき、私たちは感覚のシフトを経験する。
現時点で、どんな障害が問題解決の道をふさいでいるかを見てみよう。それらは複数の解釈が可能な要素、つまり、方程式の変数のような存在だ。問題はさまざまな形で定義される。定義が多くなれば、シナリオの数も増えていく(関数の問題のように見えて幾何の問題・・・ガリレオ、映画)。
現状と求める結果を隔てている障害を特定していく過程で、この定義は変わっていくことになる(『初めて考えるときのように』でも同じことが言われていた気がする)。
創造的問題解決法(=C)では、あいまいさや矛盾を容認することが求められる(これはAmbiguityの原理)。
問題が生じたら、このなぞなぞを参考に、いくつもの異なるシナリオを作って、内なる感覚の変化を観察しよう。
問題の定義に時間をかけよう。
解決を急がずに、しばらくの間、問題とともに過ごすという姿勢は、クリエイティブな問題解決へとつながる。
不幸にも、多くの人が最初の定義に基づく短絡的な解決によって性急に問題を解決しようとする。問題の定義に焦りは禁物だ。
創造的問題解決においては、問題解決にかける時間の80%を、問題を正しく定義することに費やす。
釘が一本抜けたので、蹄鉄が取れた。蹄鉄が取れたので、馬がだめになった。馬がだめになったので、騎手が役立たず。騎手が役立たずになったので、戦に敗れた。戦に敗れたので、国が失われた。それもこれもすべては釘が一本抜けたためだ。
ジョージ・ハーバート『リチャード年鑑』
真の問題点を追及しよう(KJ法)。
アナロジーによる客観化
行き詰まりを感じている P を P’ になぞらえて、NBモデルを実践してみよう。創造的問題解決を最大限有効に機能させるテクニックがいくつかあるが、それらに共通するのは気持ちの行き詰まりを解消することだ。
NBモデルでは、自分がいま陥っている行き詰まり、あるいは抱えている問題を、別の具体的なものにたとえる。あるいは、置き換えることによって客観化する。
- 行き詰まりを感じている個人的な問題を一つ取り上げる。
- すぐに対処しなければならない具体的な状況を一つ想定する。ex. 友人からの気の進まない依頼
- 求める結果を想定する。
- どのような内的あるいは外的障害があるか。
- 求める結果に向かって動き出すためのRespondingを少なくとも 5 ~ 7 パターン考える。
- リラックスした集中状態でアクションを起こす。
- アクションの結果を確認する。
問題の定義が間違っている可能性
問題の定義には、これまで見てきたように、複数の可能性がある。にもかかわらず、せっかちに問題解決をしようとして最初の定義にこだわるとある矛盾が生じる。その矛盾とは、問題解決の努力がむしろその問題を生み出しているという矛盾である。
この矛盾は、その努力を止めてみることで抜け出せる。
新しい解決法を試みているつもりで実はいままでと同じことを繰り返しているにすぎないときに、人は自ら失敗へと進んでいく。前回有効だった問題解決スキルに固執することが、次の問題の解決を阻んでいるのだ。
矛盾をはらむ問題の中に存在する揺れも、見えないストップサインを設置する。
私たちは、現状の不利益な面を十分認識できているが、しかし、それらのデメリットを生み出しているのが自分自身の行動であることを自覚していない。矛盾する問題から抜け出すためには、完璧主義から、あるいは、「在る為に為す」ことの罠から抜け出すことだ。問題を定義しなおすことによって、つまり、この状況を作り出した矛盾をはらむ行動に着目することによって問題は解決される。
問題を解決しようという試みがかえって問題を大きくしてしまうという悪循環に気づいたら、ひとまずメリーゴーラウンドを止めて木馬から飛び降りよう。
創造的問題解決を成功させる秘訣は The Heart of Natural Brilliance であり、第六の原理「問題の定義が間違っている可能性を考慮する」ことである。
(ウルトラ・ソリューションを求める人は、往々にして、問題を解くために本当に必要な自分自身の仕事をおろそかにする。)
創造的問題解決
創造的問題解決では問題 Problem をごくシンプルに現状 Present State と求める結果 Desired Outcomeの差として捉える。なので、最初の作業は現状を描写し、自分が求める結果を明示することになる。そうすることで両者の違いを問題として捉えることができる。この問題が、さまざまに定義できることは既に述べたとおりである。
Respond
明確な目標を定めれば、それが達成するチャンスもスピードも格段に上がる。目標は
- 心から望むことで
- 自らコントロールできること、かつ、
- 達成確認ができるものを、
- 現状のポジティブ要素を維持することを考慮しながら
- 肯定文で表現する
とよい。
Witness
NBモデルの姿勢で経験から学べば、すべてのことが進むべき方向を示唆するフィードバックになる。たとえ間違った定義のもとに創造的問題解決をしても、それによって生じた結果を Witness すれば、正しい方向に向かっているかわかる(このように Witness が軌道修正の役割を担うから、冒頭で第六の定義はあえて明示されなかった)。ゴールが「優れたスピーカーになること」ならば、気を失いかけたのも学習の一部になる。経験から学ぶ質問は確認を促し、ゴールを見据えたねばり強い学習を生み出す(再び Respond へ)。
才能に対する信頼
教育者は学習者に潜在している才能を信頼しよう。コンサルタント、セラピスト、教育者は、自ら仕事を失うような方向を目指す。自分の人生のストーリーを変えることができるのは自分だけだ。学習者の人生を変えることができるのも学習者自身である。もし教師であるならば、クライアントの内側で発見されるのを待っている真の才能に目を向けよう。
1件のコメント