「授業する」というのは教師が話すことではなくて、子どもたちが学ぶことだ。
そのためには、何を話すか決めるより、できるだけこちらが多くを話さないように工夫したい。
大事なのは教師自身が頑張って何かを物語ろうとするのではなく、実物やデータや概念そのもの、あるいは、子どもたちの中にある物語を解放することだと思う。
例えば、かつて塾で社会の授業を受け持った時のメモを公開してみよう。
1. 実物から語り起こせ
身近な体験と結びついていないと面白くない。パイナップル持っていくか。あるいはチョコレートでも良い。チョコレートから、原料の話をしても良いな。
2. グラフに語らせよ
プリントは「データを読む力をつける」目的で作られたものだ。グラフから読み取らせる質問が欲しい(Q. お得意さんはどこ? A. 中国)。また、昔(1960年)と最近(2021年)の比較を読み取って欲しい。
3. 貿易は交換である。
国どうしの売り買いを貿易という。
外国へ売る - 輸出 - お金が入る
外国から買う - 輸入 - お金が出ていく
貿易は交換であるから、経済の基本を成す。海外から材料を得て、国内で消費せずに、新しいものを作ってそれをまた世界中の人に売っていく、ということも当然ある。
貿易には多くのエネルギーを使った物流が関わる(だから運輸なんだ)。しかし、今は交換コストが限りなく小さいので(The Box)、今や物は世界中を「旅」して私たちの手元に届くようになった。
4. 貿易は国交と影響し合う。
輸出が多すぎて不満が出たり、輸入品が安すぎたりすると貿易まさつが起こり、国交に悪影響を及ぼす。また逆に、国際情勢によって貿易が危ぶまれることもある。と言うのも、貿易は国交の一形態であるから。
ゆえに、貿易は国交であると言える。
5. 今や貿易なしに生きられない。
国内で手に入らない物を得るためには貿易が必要だ。貿易がないと、便利な生活ができない(このことは ChatGPT に書かせた)。とかく、物の種類を増やし、生活を豊かにするためには貿易が必要だ(消費者の選択肢が増える、この時代に自給自足は難しい)。
川喜田二郎の言うように、今や日本は、いやどの地域も、世界の繋がりなしには生きられない。そのことを貿易は、物の供給の面で教えてくれる。
つまり、貿易は世界との繋がりである。
6. 貿易から国を知れる。
貿易からその国の得意不得意が分かる(科目と一緒だよ)。
貿易によって、自分の得意な分野に集中できる(だから、その国が得意としていることは輸出を見れば良い)。逆に、不得意な分野は他国から買えば良い。得意な物を世界に売り、苦手なものを世界から買うのに、貿易は必要だ。このように見ると、貿易からその国を知ることができると言えるだろう。
あるいは、貿易から価格の仕組み(需要と供給)が知れる。さらには、貿易に関わる仕事、例えば、物流、商社、港湾などを学ぶことができる。
これほどに、貿易は多くを学ぶことができる。